油の話になると、
「どれが体にいいですか?」
「おすすめは何ですか?」
と聞かれることがよくあります。
正直に言うと、その質問に即答できたことはあまりありません。なぜなら、油は理屈だけでは説明しきれない形で、
体に反応として現れやすいものだからです。初めて変化の細かさに気づいたとき、「油ってこんなに違うんだ」と驚いたほどです。
専門書を読むと少し難しく感じますが、実際に体の中で起きていることは、とてもシンプルです。脂肪酸の種類、酸化しやすさ、代謝の負担。その小さな違いが積み重なって、体感として表に出てくるだけのことです。
せっかく選ぶなら、「これが良いらしい」という他人の基準ではなく、“自分の体に合う油”に出会ってほしい。その想いで、この記事を書いていきますね。
油は“栄養”より先に、体調に出る
油の話は難しく聞こえますが、実はとても分かりやすい性質があります。油を変えると、多くの人は食後の軽さ・翌朝の疲れ・肌や腸の状態、ここが動き出します。
専門的に言えば、油の成分によって、
- 代謝される場所(肝臓・小腸のどちらが負担を受けるか)
- 炎症を促すか抑えるか
- 酸化しやすいかどうか
この違いが“体感”につながります。
肌や腸も、油の種類に敏感です。
特に、リノール酸が多い油は、体質や摂取量によっては炎症に関わりやすいとされることがあります。油を変えただけで肌が落ち着くというケースは、決して少なくありません。こうした変化は科学的にも説明できますが、なによりわかりやすいのは、体がすぐ教えてくれるという事実です。
こんな反応が続くとき、油見直すきっかけに
「なんとなく不調」が続くとき、食事全体ではなく“油だけ”を変えると、驚くほど変化が出ることがあります。
1. 食後の重たさ・だるさ
とくに リノール酸の多い油(こめ油・グレープシード・サラダ油など) は、酸化しやすく、消化の負担が大きくなりがちです。
揚げ物や炒め物を食べたあと、
- 胸の重さ
- だるさ
- 眠気
が出る場合、油の影響が強く働いていることがあります。「味は軽いのに、体は重い」という不思議な現象が起こるのはこのためです。
2. 翌朝の疲れが抜けない
油の代謝が追いつかないと、睡眠の質が落ちることがあります。腸が重い状態で眠ると、副交感神経がうまく働かず、回復しきれないまま翌朝を迎えてしまうのです。
「寝たはずなのに、体が起きてこない」
そんな日が続くときは、油の見直しだけでガラッと変わる人がいます。
3. 肌や腸に“軽い炎症”が出る
ニキビ・肌荒れ・便秘・下痢など、小さな不調が続くときも、油の質が関係していることがあります。
リノール酸は身体に必要な脂ですが、多すぎると炎症を促しやすい傾向があるため、肌が敏感な人ほど反応が出やすいです。逆に、オレイン酸の多いオリーブオイルは体感が穏やかで、炎症に左右されにくい油といえます。
店主の考える「油を選ぶ前の3つの視点」
専門知識を覚える必要はありません。ただ、この3つだけ知っておくと、油の選び方が一気に楽になります。
1. 原料を見る
油の原料は、もともと植物や種から生まれています。
菜種(キャノーラ)、ごま、米ぬか、オリーブ、亜麻、えごま等、原料が違えばそれぞれ脂肪酸バランスが異なり、炎症の出やすさや、酸化のスピード、胃腸への負担が変わります。
難しく考えなくてよくて、「最近どの油を使ったときが一番軽かったっけ?」と体の記憶を呼び戻すだけで十分です。
2. 取り出し方を見る
油を本気で選ぶなら、原料だけでなく、どうやって取り出されたかを知ることが欠かせません。同じ原料でも、圧搾でしぼられた油と、溶剤で抽出された油では、体が示すサインがまったく違うことがあるからです。
圧搾
原料に圧力をかけて油だけを取り出す方法です。原料に含まれる微量成分が残りやすく、脂肪酸の変性も少ないため、体に入ったときの反応が素直に出る油です。
溶剤抽出
原料にヘキサンなどを使って効率よく油分を取り出す方法で、工業的には合理的で、安定した品質を作れるメリットがあります。ただ店主として感じているのは、体の反応に個人差が出やすいという点です。
溶剤そのものの善悪ではなく、
- 熱がかかりやすい
- 微量成分がそぎ落とされやすい
- 精製の過程で均一化される
こうした工程の積み重ねで、敏感な人は小さな違和感を感じることがあります。
溶剤が悪いという話ではありません。ただ、体の反応を基準にしたい人には、圧搾油のほうが変化が読み取りやすい。店主としては、ここが大きな違いだと感じています。
3. 酸化しやすさを理解する
油のいちばんの敵は、酸化です。酸化が進むと、胃が重くなったり、なんとなく疲れが抜けない、肌の調子が悪くなったりします。
脂肪酸の性質はざっくり3つだけ覚えれば十分です。
飽和脂肪酸(SFA)
ココナッツオイル、パーム油、ラード、バター、ギーなど
→ 酸化に強く加熱向き。どっしり。量によっては重い。
一価不飽和脂肪酸(MUFA)
オリーブオイル、アボカドオイル、ハイオレイック系のひまわり油・こめ油(※品種による)
→比較的安定。体感が穏やかで扱いやすい。
多価不飽和脂肪酸(PUFA)
- オメガ6(リノール酸):サラダ油、こめ油、グレープシード、ひまわり油(通常品)、コーン油、ごま油(比較的多い)
- オメガ3(αリノレン酸):亜麻仁油、えごま油、チアシードオイル
→ 酸化しやすく、体調への影響が出やすい。
とくにオメガ6は普段の食生活で摂りすぎになりやすいため、油の質と揚げ物の頻度はセットで考える必要があります。
詳しく覚えなくてよくて、「油にもそれぞれ性格がある」、それくらいの理解で十分です。
おわりに
油の世界には、「ヘルシー」「軽い」「クセがない」「植物性」そんなよさそうに聞こえる言葉がいくらでも並んでいます。
けれど、体が感じているのはキャッチコピーではなく、中身そのものです。
わたしが油を選ぶとき、最後に必ず確かめるのは体の反応です。
- 揚げ物をしても重くないか
- 翌朝まで疲れを持ち越していないか
- 肌がざらついたり、赤くなったりしないか
こうした実感ほど、誤魔化しようがありません。
油を変えた途端に劇的な変化が起きるわけではありません。でも、日々の「なんか重い」「疲れやすい」という小さな違和感の裏に、油が関わっていることは本当に多いのです。
探すべきは「正解の油」ではなく、自分の体が楽になる油です。迷ったときは、またふらりと寄ってくださいね。
店主より


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