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麹って、結局なに?基本の話

麹とは

麹という言葉は、もう珍しいものではなくなりました。スーパーの棚にも、ネットの記事にも、料理の話題の中にも、当たり前のように出てきます。

日々の買い物や献立を考えていると、「そういえば、これも麹だったな」と思う場面も増えました。けれど、「麹って何?」と聞かれたとき、仕組みとして説明できる人は意外と多くありません。

  • 発酵食品のこと?
  • 菌のこと?
  • 体にいいやつ?

どれも大きくは間違ってはいません。ただ、どれもどこか曖昧で、「それが何か」を説明できている感じがしません。

調べていくと、今度は「いい」「すごい」「取り入れたほうがいい」そんな言葉が次々に出てきます。でもその一方で、麹そのものが何なのかは、かえって見えにくくなっている気がします。

情報は増えているのに、「分かった」というより、「分かった気がする」だけが積み重なっていく。だから一度、麹の使い方や使うとどうなるのかという話から離れて、麹ってそもそも何者なのかだけを、整理してみます。

目次

麹は「食品」ではない

まずここが、いちばん誤解されやすいところですが、麹は、食品のジャンル名ではありません。料理名でも、成分名でもない。麹を一言で言うなら、「麹菌を穀物や豆などの原料に繁殖させた状態」です。

米麹、麦麹、豆麹。これは菌の種類が違うのではなく、菌が育っている材料が違うだけです。

蒸した米に麹菌の胞子(種麹)をふり、温度と湿度を管理して、菌糸が原料の中に伸びていく。その「育っている途中の状態」を麹と呼びます。

麹づくりは、ざっくり言えば菌が増えやすい環境を整える作業です。温度が上がりすぎないようにしながら、乾きすぎないようにも気を配る。切り返しと呼ばれる手入れで塊をほぐし、熱や湿気の偏りをならしていく。こうした管理の積み重ねで、菌は原料の中に少しずつ広がっていきます。

ここで押さえておきたいのは、麹は完成品ではないということ。次の工程に進むための、途中段階にある存在です。売り場では完成品のように並んでいますが、仕組みを見ると、立ち位置はずいぶん違います。

麹菌の仕事は?

では、麹菌は何をしている存在なのでしょうか。

麹菌の役割はとてもシンプルで、分解することです。菌が直接「甘くする」「旨くする」というより、酵素を作って、原料を分解しやすい状態に整えていきます。

米の主成分は、でんぷんです。でんぷんは分子が大きく、そのままでは次の発酵に使いにくい。そこで麹菌は、アミラーゼ(でんぷんを糖に分解する酵素)を出して、糖に近い形へ切り分けていきます。

豆や麦などたんぱく質が多い材料では、プロテアーゼ(たんぱく質をアミノ酸側へ分解する酵素)の比重が自然と高くなります。つまり、原料が違えば、麹菌が担当する分解の方向も変わるということです。

実際に起きているのは、菌が酵素を作り、酵素が分解を進め、その分解が次の工程の材料になる、という流れ。麹は、その次の工程に渡す材料を整えている場所なんですね。人の体では時間がかかる分解を、先に進めてくれている。そう考えると、少し役割が見えやすくなるかもしれません。

味噌や醤油、甘酒が、そのままの原料からは生まれないのは、この「分解」という工程があるからです。

麹菌は主役ではありません。後から続く発酵や熟成が、ちゃんと進むように下準備をしているだけの仕込み役です。でもこの下準備がなければ、何も始まらない。そういう意味では、欠かせない存在です。

米麹・麦麹・豆麹の違いは?

米麹・麦麹・豆麹の違いを語るとき、つい「どれが良いか」に話が行きがちですが、ここで見るべきポイントは一つだけです。原料に何が多く含まれているか

米は、原料の大部分がでんぷんです。そのため米麹では、麹菌が出す酵素の働きも、糖に分解する方向(糖化)に寄りやすい傾向があります。白米麹が「甘みが出やすい」と言われるのは、この原料構成によるものです。

玄米麹は精白されていない分、表皮や胚芽が残っています。そのため、白米麹に比べて、たんぱく質・脂質・ミネラルが相対的に多く含まれています。その分、でんぷんの割合は白米よりやや低くなります。この原料バランスの違いによって玄米麹は、糖化による甘さが前に出やすいというよりも、アミノ酸側の分解がやや厚く出やすい傾向になります。味としては、甘みよりもコクや深みとして感じられることが多く、使い方によって印象が変わりやすい麹です。

豆麹は、さらに方向性がはっきりしています。原料そのものにたんぱく質が多いため、分解の主役は自然とアミノ酸側に寄ります。旨味や渋み、独特の風味が出やすく、長期熟成の味噌や醤油に使われる理由も、ここにあります。

麦麹は、でんぷんとたんぱく質のバランスがその中間。甘さと旨味の両方が出やすい位置づけで、地域や用途によって使われ方の幅が広いのは、この原料構成の柔軟さによるものです。

つまり、麹の種類の違いは「菌が違う」ではなく菌が育つ土台が違うということ。土台が違えば、酵素の出方も、分解のされ方も、結果としての香りや味の方向も、自然と変わっていきます。

乾燥麹と生麹の違いは?

乾燥麹と生麹って、実際いちばん迷いやすいところだと思いますが、違いは水分量です。

  • 乾燥麹は、水分を抜いて保存性を高めたもの
  • 生麹は、水分を含んだまま流通するもの

品質がいい・悪いという話ではなく、流通や管理の設計が違うというだけのことです。

水分が多い食品は、温度の影響を受けやすく、香りも変わりやすい。一方、乾燥させると水分を飛び、微生物の活動は鈍ります。その分、長期保管がしやすくなる。これは良い悪いではなく、保存と輸送の現実に合わせた形です。

乾燥によって起きるのは、「菌が死ぬ/生きる」という話だけではありません。麹の価値は菌の存在そのものよりも、そこで作られた酵素や分解の状態にもあります。乾燥は、その状態を固定する方向に働きます。だから乾燥麹は、扱いやすさや安定性が強みになる。

生麹は逆に、仕込み直後の状態に近いぶん、香りや質感が残りやすいことがあります。ただしその分、保存条件や期限設計が少しシビアになります。

なぜ麹は「良いもの」として語られやすいのか

麹は、発酵食品の話題とセットで扱われることが多く、日本の食文化とも強く結びついています。

そのため、発酵という言葉が持つイメージや、和食という文化的な文脈の中で受け取られやすい存在です。

結果として、麹は何をしている存在なのかよりも、どういう印象のものかで語られやすくなりました。

工程や役割の話に入る前に、「良いもの」というイメージが先に立ちやすい。それが、麹の仕組みが分かりにくくなっている一因だと感じています。

おわりに

麹は、万能な食品でも、完成された調味料でもありません。原料を分解し、次の発酵や熟成に渡すための、途中の工程にある存在です。原料が違えば、分解の方向も変わる。水分量が違えば、扱い方も変わる。それだけの、とても工程的なもの。

「良いから使う」ではなく、「この工程だから、こう使われている」。

そんなふうに見ていくと、麹は、必要以上に持ち上げられることもなく、でも、ちゃんと大切な役割を持った存在として、理解しやすくなる気がしています。

まずは麹が何者で、何をしているのか。そこが見えれば、使うかどうかは、その先で十分だと思っています。

店主より

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