寧日の読みものを整えていると、どうしても目に留まってしまう言葉があります。
「天然由来100%」
「ほぼ天然」
どちらもやさしそうで、どちらも正しそうで。
なのに、不思議と“決め手”にはなりきれない。そんなもどかしさを感じることはないでしょうか?
わたし自身、子どもが生まれたばかりの頃は、「100%と書いてあるなら、そっちが一番いいに違いない」と、ほとんど迷わず手に取っていました。
でも、成分の本を読み始めたり、メーカーさんに直接お話を聞いたり、自分の肌や子どもの肌の反応を見ていくうちに、
あれ?『天然由来100%』という言葉だけでは、安心も危険も、どっちも言い切れないかもしれない。
そんな感覚が、じわじわと育ってきました。
今日は、ラベルの言葉だけでは分からない“境目”の話を、少しだけ専門的な視点も交えながら書いてみます。
天然由来=自然そのもの、ではないという話
まず一番誤解されやすいポイントから。
「天然由来100%」という表示には、厳密な法律上の共通基準はありません。
業界ごとのガイドラインや、国際規格の考え方(※化粧品でよく使われる基準など)はあるのですが、わたしたちが日常的に使う洗剤やボディソープ、シャンプーなどでは、メーカーごとの解釈に任されている部分が大きいのが現状です。
ここでいう「天然由来」とは、多くの場合、
スタート地点の原料が、植物・鉱物などの天然物である
という意味です。
たとえば、こんなイメージです。
- ヤシ油を原料に、化学反応を何段階も重ねて界面活性剤を作る
- トウモロコシのデンプンを分解してアルコール系の成分にする
原料は確かに植物由来。けれど、途中の工程では、きちんと化学反応が行われているんですね。だから、
天然由来100%=化学物質ゼロ、という意味ではまったくありません。ここで少し拍子抜けする方もいるかもしれませんが、これは「だまされている」という話ではなく、言葉の使われ方の問題です。
そしてもうひとつ大切なのは、
「天然由来100%=必ず肌にやさしい」
「それ以外=良くない」
といった、白黒では語れない、ということです。同じ“天然由来”の界面活性剤でも、
- 洗浄力が強くて、肌が乾燥しやすいもの
- 洗浄力は穏やかで、敏感肌向きに作られたもの
性格がまったく違います。
数字だけ見ていると安心しやすいのですが、本当に見たいのは「原料の出どころ」だけでなく、「どう加工されて、どんな性格の成分なのか」というところなんですよね。
「ほぼ天然」という言葉が生まれる背景
では、「ほぼ天然」という言葉は、どんなときに使われるのでしょうか。
これは、メーカーさんとお話をするとよく出てくる表現なのですが、決して「中途半端です」という意味で使われているわけではありません。むしろ、
「できる限り天然由来の成分で組み立てたけれど、安全性や使い勝手を考えて、どうしてもこれだけ加えました。」
という、設計上の“正直な告白”であることが多いです。たとえば、
- カビや雑菌の繁殖を防ぐための防腐成分
- ボトルの中で分離しにくくするための安定剤
- 使用感を整えるための、少量の合成ポリマー など
もしこれらを一切使わずに、完全に自然由来だけで作ろうとすると、
- 数週間で品質が変わりやすくなる
- 夏場、においや色に変化が出やすくなる
- 毎回、強く振ってから使わないといけない
といった、日常生活では扱いづらい状態になることがあります。
もちろん、それを承知のうえで「完全に自然素材だけ」の商品を選ぶのも素敵な選択です。ただ、「毎日家族全員がストレスなく使えること」も、ひとつの大事な安全性だと感じています。
だから、「ほぼ天然」と書いてあるものに出会ったときも、そこで思考を止めるようなことは、あまりしなくなりました。表示よりも、成分の並びや全体の設計を見ていくと、数字だけでは測れない「やさしさ」が見えてくることがあるからです。
ラベルの言葉の強さよりも、暮らしの中でちゃんと機能するかどうかを重視しています。
ラベルの言葉だけでは「境目」が読めない理由
ここまで読んで、「結局、どう見分ければいいの?」と思われたかもしれません。
正直にお伝えすると、ラベルの表側だけでは、境目はほとんど見分けられません。
わたしも最初の頃は、「天然由来100%」「ナチュラル処方」「やさしい成分」そんな言葉に、とても安心させてもらっていました。でも実際に、全成分表示をノートに書き出してみたり、成分辞典を片手に、ひとつずつ調べてみたり、自分や家族の肌の反応をメモしてみたり。
そんなことを続けているうちに、「表のキャッチコピー」と「裏の成分」のギャップが、少しずつ見えてきました。
たとえば、こんな2つのボディソープがあったとします。
A:天然由来100%
B:ほぼ天然
成分表を見てみると、
- Aは、自然由来の界面活性剤だけれど、洗浄力がかなり強いタイプ
- Bは、天然由来の成分が中心で、一部だけ刺激の少ない合成成分をプラスしてマイルドにしている
という設計になっていることもあります。
「100%かどうか」よりも、「どんな成分をどう組み合わせているか」のほうが、実際の肌当たりには大きく関わってきます。
寧日で成分をチェックするときは、この組み合わせの「空気感」まで見るようにしています。
境目を「ラベル」から「自分の軸」に移す
ここまで、少し専門的な話を交えながらお伝えしてきましたが、結局のところ、わたしが一番お伝えしたいのは、とてもシンプルです。
「天然由来100%」と「ほぼ天然」の境目は、ラベルの言葉ではなく、自分がどこに安心したいか、という「軸」のほうに置き換えたほうが楽になる、ということです。
- とにかく香りの負担を減らしたい
- 子どもの肌トラブルが出にくいものを選びたい
- 環境にできるだけ配慮したい
- 家族全員がストレスなく使えるものがいい
この「優先したいこと」を自分なりに決めると、ラベルの数字より、成分のバランスや使い心地を冷静に見られるようになります。
寧日の読みものは、その「優先順位」を一緒に整理するための、小さなノートのような存在でありたいな、と思っています。
完璧なラベルより、続けられる選び方を
「天然由来100%」と書かれた商品を選ぶことも、「ほぼ天然」と書かれた商品を選ぶことも、どちらも間違いではありません。
大切なのは、どちらが正しいかを決めることではなく、自分の暮らしにとって無理がないか、納得できるかどうか。
すべてを完璧に理解する必要はありませんが、「これはなぜこう書かれているのかな?」と一度立ち止まって考えてみる。それだけで、選び方はぐっと現実的になります。
この記事が、表示に振り回される不安を少し減らして、「自分で判断していいんだ」と思える材料のひとつになっていたらうれしいです。
店主より


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